近頃、ゴルフスイング理論で、右足カカトが上がらないようにスイングする『べた足打法』が、また持てはやされていますが、はたしてそれは本当に正解なのでしょうか?
青木選手の全盛時代、ゴルフ雑誌には『べた足』の言葉がよく見かけられた
『ベタ足打法』という言葉が最初に流行ったのは1980年前後だったと記憶しています。
日本のプロゴルフ界は第1期AO時代、ジャンボがスランプ入りし、中嶋常幸選手がデビュー後ちょっとだけ小休止で、青木功選手が若手三羽烏(倉本、湯原、羽川)を迎え撃ちながら、海外でも八面六臂の活躍をしていた、そんな時代でした。
そんな、青木功選手の時代、ゴルフ雑誌には青木さんの提唱する『ベタ足打法』の記事がよく載っていました。
ここで言う『ベタ足打法』というのは、バックスイングでのヒールアップをするかしないかではなくて、ダウンスイングからインパクトまで、右足のカカトが地面から離れるのを我慢してスイングしなさい。という教えでした。
当時、青木選手のファンだった『空き地ゴルファー』の私は、青木選手のべた足打法を真似して右膝を痛めましたw(それ以来数十年右膝の調子が良くないのですwww)。
その当時、青木ファミリーというグループがありました。青木さんを師匠と慕って集まったプロゴルファー達です。
当時ゴルフ雑誌で青木ファミリーの選手達のパラパラスイング写真が載っている付録本がありました。
見てみると、青木選手の弟子たちは(船渡川育宏プロ、泉川ピートプロ、中川泰一プロ)皆、ボールを打ち抜くまでちゃんと右足カカトを地面に着けているではないですか!
しかし、青木選手のカカトはインパクトで浮いていた
しかし、『ベタ足打法』を提唱している、当の青木功選手はドライバーショットでは、インパクトでは右足のカカトが上がっていました。
短いクラブでは右足のカカトを地面に着けたままインパクトしていましたが、大きいクラブではインパクトでは若干カカトは上がっていました。
青木選手が3位に2度入っている『ワールドシリーズ・オブ・ゴルフ』で、向こうの解説者が、青木選手とアメリカの選手のスイングをスローで比較していたのですが、その解説者は「Aokiのスイングはフットワークを使ったスイングだね」(戸張捷さんの翻訳だったはず)と言っていました。
青木選手がベタ足打法を提唱しているにもかかわらず…。
そう、実際当時の青木選手はフォローで両足ももがくっつくようなスイングでした。
青木選手は長身ですが、スタンスは広くないですし、アドレスでは股関節部分を折らず、お腹から背中の丸みで前傾するスタイル。
そして、インパクトゾーンでは、正面に向けた体の前を、腕とクラブが通り抜けていくタイプのスイングですから、本来動きやすい下半身を制御する目的で、『べた足』という表現を使ったのでしょう。
『べた足は世界を制す』と思わせた、羽川豊選手
この当時、青木さんの他に、もう一人の『べた足打法』の旗頭といへば、何と言っても羽川豊選手でしょう。1981年国内メジャー年間2勝、翌年マスターズ15位などの実績を残した、元、若手三羽烏の一人として活躍した、名プレーヤーです。
羽川豊選手は後にイップスによるスランプでツアーを退きますが、爆発した時のゴルフには迫力がありました。その彼のゴルフを支えたのが、『べた足打法』でした。
羽川選手のスイングは、青木さんのように、「べた足のつもりでスイングせよ」ではなく、マジでべた足。ドライバーショットでもべた足です。
普通にスイングを見ているとスムーズに見えますが、スローモーションや分解写真で見ると、インパクト後、フォローになって随分と腕が高い位置に来てもまだ、カカト(羽川選手はレフティなので左足カカト)が上がりません。よくこんなこと出来るなと思わせます。
私見ですが、羽川選手もまた、アドレスで前傾が深く膝のゆとりも多めです。そしてグリップの位置も低めです。べた足で打つために、自然にできたアドレスなのか、ここまでべた足の選手はなかなかプロでは見当たりません。
※最近の羽川選手のアドレスは当時より前傾が深くないですね。
USPGAツアー賞金王にベタ足打法の選手はいたのか?
最近、というか定期的にゴルフ雑誌では、『ベタ足打法』がよく取り上げられます。特にこのごろは、活躍中の韓国出身の女子プロゴルファーが、このベタ足打法を取り入れている事もあってか、「ベタ足打法を見習え」的な論評を見かけます。
本当に「インパクトまでベタ足」はありなのか?
へそ曲りの私はちょっと調べてみました。アメリカ男子プロゴルフツアーの歴代賞金王(1990年〜)でドライバーショットに於けるインパクト時の右足カカトの状態はどうなっているか。
結果は、インパクトで右足がベタ足の選手は1人もいませんでした。インパクトギリギリまでベタ足、またはベタ足に限りなく近いのは、コーリー・ペイビン選手とグレッグ・ノーマン選手くらいです。
最初から飛ばす事に重きを置いていない選手と、スタンスが狭く、下半身をあまり使わなくても飛ばせるパワーを持った選手というそれぞれのプレーヤーの特長です。
それでもあなたは、ベタ足打法を取り入れますか?
道具の進化とベタ足スイングの関係
これがアイアンとなると、右足カカトベタ足率がぐんと上がります。これは、「飛ばす」ためのスイングと「狙う」ためのスイングへの流れとでもいうのでしょうか。
韓国の女子プロゴルファーにベタ足を採用しているプロが目立つのは、ドライバーショットでも「狙う」ためのスイングを目指しているのかもしれません。
それもクラブとボールの進化が影響していると思えるのです。シニアツアーの選手達は、自分たちがレギュラーツアーでプレーしていた頃より現在のほうが飛ばしているのですから…。
あなたはどう思われますか。
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